シオン表情50題 >>21-30 ◆戻
絵・颯城/文・天羽 |
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21.嘲笑![]() 「へーえ」 シオンは一瞬目を見開いた。シオンを相手に魔法戦を挑んでくるとは。 まったくの無知か、よほど自信があるのか。 面白いじゃないか。 ふっとこれ見よがしに笑ってみせれば、たじろぐ気配が伝わってくる。どうやら、ただの無知な野郎の集団らしい。困るなぁ、どうせならもう少し楽しませてくれよ。 見せびらかすように派手な魔法を、花火みたいに目立つように一つ披露してやった。それだけで、敵の気配は消えていた。方々に逃げ出したらしい。張り合いのない相手だ。これじゃどっちが悪者なのか、わからないじゃないか。 |
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22.感動![]() 「シオン様!」 振り返った先に、笑顔のシルフィスがいた。夕日に照らされて、蜜色の髪がキラキラと光を撒き散らす。暖色の光に、その頬が僅かに染まる。 美しい、とシオンは素直に感じた。もとより綺麗な顔立ちをしていたシルフィスだったが、女性へと分化を済ませた後は、日に日に美しくなるようで目が離せない。 明るい色をした太陽の残光の中に立つシルフィスは、思わず声をなくすほどに人目を引いた。にこやかに微笑んで近づいてくるシルフィスを前に、全身が痺れるような衝撃が走る。 なぜ、こんな稀有な存在が、こんなにも近くにいるのか。なぜシルフィスは、シオンなどに心を開き、そうして純粋な笑顔を見せてくれるのか。どうして、シルフィスだったのだろう。考えても答えなどない。ただ、その互いに選び選ばれた確率を思うと、深い感銘を受けずにはいられない。 こんな、奇跡みたいな美しい情景を目の前にすると、またひとつ忘れていた感情を呼び覚まされたような気がするのだ。 |
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23.どうして![]() 「シオン様なんて、嫌いです!」 ま、待て、待ってくれー 「さようなら」 シ、シルフィスぅ!? いきなり、なんだっていうんだ! 「これでお別れですね」 ええぃ、待て、待て、待つんだっ! 俺は何も聞いてないぞっ! どうしてなんだ? せめて理由を教えてくれ!!! シルフィース!! ……そんな夢を見た朝、顔にはびっしり冷や汗が浮かんでいた。 |
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24.意地悪![]() とりあえず美人にはちょっかいをかけたくなる。反応を見て、楽しみたくなる。 「シオンは意地悪ですわっ」 「この、根性悪っ!」 お姫様も、異界から来たオテンバ娘も、そりゃまぁ人を人でなしのように言って怒る。ピーピーと鳴く小鳥みたいなもんで、まぁそんな反応も悪くはないのだが。 ただ一人、アンヘルの美人さんだけは、ちょっと違う。 どんな軽口を叩いても、怒りながらもどこかすべてを見透すような翠の瞳が、まっすぐにこの心を貫いていく。 シルフィス相手にだけは、どうも調子が狂うんだ。なぜなのか、理由はまだ、わからないけれど。 |
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25.我慢![]() くそ、ざっくりと遠慮なく切れやがって、使えない。少しは持ち主に遠慮しろってんだ。血が足りなくなるだろーが。 激しく痛む傷に、笑顔をつくる余裕もなくなってきた。暫くは近くにいる人間相手に無駄口叩いて気を紛らわせていたものの、そろそろ限界か。 生憎シオン以外に魔導士はいない。シオンが魔法をかけない限り、簡単に治癒などしない。が、魔法は作戦のために使いたかった。無駄な魔力を消費したくなくて、仕方なく簡単に応急手当だけしてやり過ごした。その結果、まだしばらくこの痛みに耐えなければならないらしい。 マゾじゃねーんだから、勘弁してほしい。止まらない血にうんざりしながら、シオンは前を見つめた。手っ取り早くすべてにケリをつけるために。 |
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26.照れ![]() 今日に限って一番お気に入りの紅茶の葉が切れていた。シルフィスが来てるのになんてこった。不本意極まりなく、舌打ちする。 「どうかしましたか?」 お茶の缶の前で仏頂面の俺を、シルフィスは不思議そうに見つめてくる。 「ん、いつもの葉がなくなってたの忘れててな。ごめんな、いつもと違うけど」 「かまいませんよ」 そんなことか、とシルフィスはくすくすと笑っている。 「うっかりしてたなぁ……」 ぼやく俺に、シルフィスは屈託のない笑顔を向けた。 「貴方が淹れてくれるなら、何でも飲みますよ」 「……毒でも?」 あんまり邪気がないから、ちょっと意地悪発言をしてみたのに。 「毒でも飲むでしょうね」 シルフィスときたら、間を置かずににっこりと笑うのだ。 「今更でしょう?」 こんなの不意打ちだ。 全幅の信頼を示すシルフィスに、柄にもなく頬が熱くなって、俺はくるりと背を向けたのだった。 |
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27.憎しみ![]() 人の恨みはずいぶんと買ってきたものだが、俺自身は今までそれほど強い恨みや憎しみを抱いたことはなかった。逃れられない運命のような出会いや、王宮に縛られるようになったきっかけにさえ、さほど強い恨み言をこぼした覚えはない。 国の中枢に関わるようになって、厄介な敵は山ほど増えたが、それらはすべて面倒ごとの一つに過ぎず、俺の感情を揺さぶるようなものではなかった。いつだって冷静なつもりだった。抑えられないほどの感情など、危険なだけだ。特に俺の立場で冷静さを失うなどもっての外。よくわかっていたし、これからもそうあり続けるつもりだったというのに。 今になってどうしたというんだろう。些細なことで、理性の箍をぶち壊す勢いで感情が暴れだす。 シルフィスの微笑み、悲しみ、怒り、そんな一つ一つに心が振り回される。アイツにそんな意思などないのはわかっているのに、こんなにも惑わせるシルフィスが、たまに憎らしくなる。こんなにも俺の感情を揺らがせられるのは、シルフィスだけなんだ。 いっそ、息の根を止めてくれ。俺がお前を壊す、その前に。 |
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28.微笑み![]() 疲れて戻ってきたら、部屋の中にシルフィスがいた。 俺の部屋で待っているうちに眠ってしまったらしい。俺の椅子に座って、机に突っ伏してしまっている。新米騎士としての毎日は、楽なものじゃない筈だ。自分のことだけで精一杯だろうに、こうして俺を待っていてくれる。なんの見返りもないというのに。 ほんの少し前まで、誰へともない愚痴がたくさんこの身の内には降り積もっていたのに。一瞬で、霧散する。 世界でいちばん、愛おしい寝顔だ。 これを前に、どうして愚痴なんて云えようか。 お前が目覚めたならばささげよう。心からの微笑みと愛の言葉を―― |
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29.まいったな![]() <注・シオレオです> 明日はレオニスの誕生日らしい。昔から自慢じゃないが「恋人の誕生日」、なんて素敵イベントには当然ここぞとばかりにはりきってプレゼントを用意したものだったのだが。 今回ばかりは困っている。レオニスが喜びそうなものが何も浮かばないのだ。そもそもがあんまり物に執着がなさそうな性格だし、そのうえ俺と4歳しか違わないというのに、既に世捨て人風情なあの内面。どー考えても何を贈っても、あまり喜んでもらえるようには思えない。骨董品とか名剣の類を、とも考えたのだが、高価なものは「いただけません」の一言で受け取ってもらえないよーな気がする。その辺頑なだしなぁ……。 難しいなぁ。悩み続けてはや一週間。いまだ、結論はでない。直接欲しいものを聞いたって、きっと明確な答えなんて返ってこないだろう。そして俺がこんなに悩んでいることが知れたら、呆れられるに違いないのだ。まいったなぁ、もう。 |
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30.嫌悪![]() 俺にとっていわゆる虫唾が走る、というよーな輩が王宮近くにゃゾロゾロいる。権力に靡き、金に従う亡者ども。 悲しいかな、これが人の世だ。世間慣れしないまま大人になろうとしている純粋なシルフィスに、あまり見せたくはなかったのだけれど。 嫌悪すべき輩に無駄に近づかれてほしくないから、目に入る場所で忠告した。シオンの婚約者、の肩書きがつけば、シルフィスに近づこうとする人間はさらに増える。シルフィスは、本能的にそれらを察知するようなところがあるけれど、王宮内ではシオンの立場を考えた遠慮もあるだろう。だから、聞かせたくない話もせざるおえない。 今更だけれど、願わくば、こんなところにいる俺を嫌わないでいてくれることを。 |
→お題提供「50 expressions」 |