75.秘密 ◆戻
※あくまでギャグとしてお楽しみ下さい… ![]() 「最近、ディアーナは良く騎士団へと行っているようだね」 「へー」 あーそうだな。シルフィスに会いにしょっちゅう来んな。 シスコンめ。よく見ている。 それ以上に俺が入り浸ったりしているわけだが。 「そう言えば、レオニスも最近よく王宮で見かけるね」 「ほー」 ……そりゃ何か理由を付けては、呼び出したり、来ざるを得ない用事を作ったりしてるしな。 「シオン、聞いているのか?」 俺の気の無い返事に気分を害したらしいセイリオスが、不満そうに語調を強める。 「聞いてるって。それで?」 先を促してやれば、まだ幾分か不服さを残したまま、しかし話の続きを口にすべく再び口を開いた。 「……まさかとは思うが」 「うん?」 「レオニスは過去を繰り返そうと……」 「げほっ!ごほっ!」 「シオン!?」 言うに事欠いて何を言い出しやがるコイツは。 無様に酒を吹き出しそうになるのをかろうじて飲み込めば、思いっきり気管でアルコールを味わってしまった。 背をさすろうと伸びてくる手に、大丈夫とばかりに手を振って見せ、心配と驚き、呆れが入り交じっているセイリオスに辛うじて答える。 「げほっ……けほ、そ、そりゃないだろ。安心しろよ」 「何でそんな事が言い切れるんだ」 「何でって……。そんなの見てりゃ分かる」 まだ喉が灼けるような感覚が残って、幾度か喉を鳴らす。にべも無く否定した俺を、セイリオスは不信の目で見ている。 「そんなの分からないだろう。隠しているかもしれないし、これからそうなるかもしれないじゃないか」 そんなことさせるか。 いい加減にしろよこのシスコンのマザコン。度が過ぎるとシルフィスに嫌われるぞ。 そんな思いがいくらか視線に乗ったかもしれない。八つ当たりだ。だが多少は自覚もあるのだろう、セイリオスは少し怯んだように言葉の先を失い、その隙にそれで話は終わりとばかりに、俺は再びカップを口元へと近づけた。 「……そういうシオンも最近騎士団に入り浸っているようだね?」 あんな女性の影の無い所。 にこりと笑んで、いきなり矛先を変えてくる。もう酔ってるんだろうか、絡むなよ。 カップを口に付けたまま、警戒するような瞳を向ける。 「まさか、君こそシルフィスに……」 「……っぐ、げほ!ごほっ!」 「な、シオン……大丈夫かい?」 「げほ……だ、大丈夫なもんか」 2度目は更に喉に強烈なダメージを食らって、今度は拒否する余裕もなく背をさすられるままに咽せる。 「……図星か?」 背をさする手は優しいが、言葉は穏やかに凄みを増している。 「違う……あ、あんまお前が阿呆なこと言うからだなあ」 「へえ、そう言えば、最近シオンの浮いた噂を聞かなくなったね」 ぎく。 「それは……」 「で、何をしに騎士団に行っているのかな?」 スイートに攻めてくるんじゃねえ。 ロイヤルスマイルを前に言葉を失っている間にも、セイリオスの疑惑が確信に転がろうとしている。 それは何かと面倒だ。 ヤバイ。何とかしないとヤバイが、しかし本当の事を言う訳にもいかない。 「とにかくだなあ……」 コンコン 何の用意もなく焦りだけで口を開いた所で、ノックが響いた。 「シオン様。夜分申し訳ありません。昼に忘れ物をいたしまして……」 どき。 通りの良い聞き慣れた低い声が扉の向こうから響く。 気配で俺以外がいることも分かってるんだろう、控えめだ。 「レオニス……?」 確かに昼、貸すと言った本を忘れてった。(俺の所為だったりするが) しかしあまりにタイムリーな出現に固まった俺を余所に意外そうにセイリオスは声を上げ、 「……失礼しました、明日出直します」 その声で主を悟ったのだろう、扉を開くこともなく去ろうとする。 「あ、いや、待ちなさい。わざわざ来たんだから入るといい。構わないよ」 おい、待て。俺の部屋だぞ。 セイリオスは何故か企むような笑みを浮かべて俺を一瞥した後、扉の外へと声を掛ける。 「……申し訳ありません、失礼します」 僅かに迷うような間の後、扉が開かれる。 どのみちコイツに入れと言われれば断ることはレオニスにはできないのだ、礼容を崩さず一礼し、判断を仰ぐ視線が俺へと向けられた。 「あー…、そこの机の上に」 「そんなに急がなくてもいいのだろう?君が任務中に明日でも間に合う私用で立ち寄るとも思えないし」 執務卓を指差した俺の言葉に被さる様にセイリオスが口を挟む。 「は……」 戸惑いを含みながら肯定を返すレオニスに、セイリオスがカップを差し出す。 っていうかいつの間に新しいカップに酒注いでんだ。 「御酒をつかわす。日頃よく仕えてくれているからね、飲んでいくといい。無礼講だ」 「おい、セイル」 「いえ、当然の勤めですので」 「私の酒が飲めないと?」 だからここは俺の部屋でそれは俺の用意した酒だっての! やっぱり酔ってるんじゃないのか。意図が読めてきた気がする。しかし、あからさまに邪魔をすれば尚セイリオスの不信を買うことは明らかで。 「そのようなことは。では……」 「……職権乱用はよくねーぞ」 「シオンに言われたくない」 ぼそりと呟いた言葉はもっともな言葉で返される。そう言われるとぐうの音もでねえ……。 畏れ入ります、と畏まってカップを受け取ったレオニスが、勧められるままに席につく。異様だ。何か内密にデカイことでもやらかしでもしない限り集まらないような面子で和やかにテーブルを囲む風景は激しく違和感がある。 「で」 席に着くのを待っていたとばかりにセイリオスが話題を切り出した。 あーあ、知らねぇぞ。 さっきから殆ど口を出さない俺の態度や、わざわざ引き止めたセイリオスの意図を読みかねているのだろう、レオニスには身構えるような緊張がある。 「シオンが最近、騎士団によく通っているそうだね」 「はぁ……そうですね」 ここで邪魔をすれば、「やはり騎士団に本命がいるようだね」等とセイリオスは勝ち誇ったように宣言するに違いない。いいさ、どうせレオニスの事だ、何を聞いたところで知りませんで終わるんだろう。その方が手っ取り早くセイリオスも諦める。……と解っていても傷つくんだぞちくしょう。 親友のくせに俺の可愛い恋心に塩を塗り込むなこっそり恨んでやる……。 そんな俺の念が届いたのか、セイリオスがちらりと横目にこちらを見て、そしてふっと笑みを浮かべた。 「どうもシオンに本命がいるようなんだが、レオニスは知らないか?」 「……っ、は……?」 思わぬ問いに思わず咽かけたレオニスは、しかしセイリオスの言葉を待っていたためか、含んでいた酒は控えめだったららしく、小さく一度咳き込んだのみだ。 くそー、どうせなら派手に慌てやがれ。 「最近騎士団によく顔を出しているようだからね、聞き及んでいないかい?」 「……」 繰り返された問いに漸く意図を察してか、レオニスが僅かに困惑した風に俺を見たが、すぐにセイリオスへと視線を戻した。 自分の想いを否定される言葉が聞きたいわけが無い。面白くなさそうに俺が視線を逸らしたのはその瞳に映っただろうか。 「……存じております」 いいさ言えよ知らない……って 「ええええええ!?」 「シオン!?」 思わず素っ頓狂な声を上げて立ち上がった俺に2人の目が集中した。 レオニスは何だその反応はとばかりに眉を顰めている。いや、だって。 「いや、知られている…とは、思わなくて、だな……」 セイリオスの不信そうな瞳に苦しい言い逃れをして腰を下ろす。 視界の端でレオニスの瞳が眇められたような、気がしたが気のせいだろうか。 「……何故レオニスが知っていて、私には教えても貰えないのかな?」 俺の受難の日かよ!……いや、何か嬉しいような哀しいような。 だって、絶対にべも無く否定されて終わると思ったんだ、まさかそう来るとは思わないじゃないか。 しかし手放しに喜べる状況でもなく。落ち着け俺。 「いやー、わざわざお耳に入れる事でもないと思、」 「殿下だから言えなかったのかと」 煙に巻くカウントダウンに入ろうかと思いきや、何やらひんやりとしたレオニスの声に遮られた。 何でそこでレオニスが機嫌悪いんだ!?果てしなく理不尽だ……飲まないとやってられん。 「私だから?」 「想う方が貴方だからです」 「っごほ!げほっ!ごほん!」 待てそこーーーー! 「ま、まさか……」 「げほっ、そ、そんなわけ……けほっ」 「……わ、私は駄目だぞ!心に決めた人が」 「けほ、だから違うって!っていういかそれまだ極秘事項!」 「シオンのことは頼りにしているが、そういう感情は」 「聞け!違うって言ってるだろレオニス!そこで涼やかに飲んでんじゃねぇー!」 「冗談です」 さらりと答えたレオニスが、空になったカップを置く。 「……」 ……どっと疲労感が押し寄せてきた。 思わず脱力した俺とセイリオスを横目に、レオニスは口元に笑みを浮かべると立ち上がる。 「他人の口から聞きだすべき事ではありませんね。感心いたしませんよ」 「う……」 詰まったセイリオスにご馳走様でした、と折り目正しく礼を取り、本を手に鮮やかに退出して行った。 もはや引き止めることはセイリオスにもできなかったようで、半ば呆然とそれを見送る。 「……やはり、要注意人物だな」 ディアーナにもシルフィスにも気をつけるよう言っておかなければ。 そんな小さな呟きを耳に、暫くこいつと飲むのはよそうと俺は固く誓った。 End. 2005.02.18 颯城零 シオレオ+セイシル前提 管理人掲示板に絵と共に書き殴ったアップする気の無かったもの第2段 殿下の扱いが酷すぎる シオンもセイルももっと格好いいと思っています……よ?(説得力無い) そんでもってディアーナがガゼル目的だったらお兄ちゃんもう情けなさすぎ(笑) |