「おまたせしました、お姫様。」









「‥‥‥、」

「ん、どした?
顔が赤いぜ。」

楽しげに覗き込めば、こいつは
せっかくの綺麗な瞳を閉ざしてしまう。

「‥‥‥‥分かってるでしょう。


ようやく答えた声は、
少しだけすねた響き。


「こんな格好‥‥」

確かに、
今まで近衛騎士の正装しか
見たことはなかったが。

「んな心配しなさんな。
今日のパーティで、
お前ほど綺麗なやつはいないさ。」



蒼い、蒼い闇の中、
怖いほど明るく輝く月光に浮かぶその姿は、
本当に綺麗で。

闇と緋色を身に纏ってさえ
清らかなその雰囲気に、
身勝手な嫉妬さえ覚えてしまうから。



「まったく、
神様に見せるのが惜しいくらいだ。」


もらした台詞に、
少しだけ本気が見えた。


‥‥だから。

貴方が、そう思ってくれるなら。





「……シルフィス?」


不意に袖を引いた、
細い指の感触。

きゅと瞳を閉じて、
ますます頬を染めて、

声にならない声で、
自分を呼ぶ。


……その声が、聞こえたから。





「やっぱや〜めた。」

「‥‥シオン?」

「他の奴らに見せるのが惜しいからや〜めた。」

「いいのですか?」

「いい。」


ためらうシルフィスに、
シオンはあっさり頷いた。



「‥‥しかた、ないですね。」



仕方なさそうに、ため息をつきながら。

シルフィスは、

そっと、安堵の息をつく。















正装の貴方を目にしたときに、
声も出なかったのは内緒。



『誰にも、見せたくない』

一瞬でも思ってしまったのは、
私だけの、秘密。










貴方が私を、
独り占めしたいと言ってくれたから。


私は貴方を、
独り占めできる。





それは、聖なる夜の贈り物。



……二人、だけの贈り物。








イラストを元にsaipoko様がSSを書いて下さいましたー♪
想いが同じ大きさというのは良いですね
シオンはまんまとシルフィス独り占め成功です羨ましいぞ代われ…!(本音)