DIVE







 墨を流したような夜。

 星さえも、あの人が連れ去ってしまった。







「‥‥逝っちまったな。」

「……ええ。」



 不釣合いなほど、静かな夜に。

 すべてが止まってしまった時の中で。



「も〜少し図太い奴だと思ったんだがなぁ。」

「‥‥シオン、」



 身を切る風にマントがなびいて。
 流される髪の向こうに、地上の星が見えた。


 闇の中。
 その煌めきが欲しくて、手を伸ばす。


「‥‥?
 おまえ、泣いているのか?」

「いいえ。
 ‥‥泣いているのは、貴方ではないのですか?」



 交わす言葉は、さりげなく。

 微かな笑みさえ口の端にのせて。


 見つめあう、互いの星は揺れていた。



「そう、見えるか?」

「はい。」

「そっか。
 ‥‥お前に見えるなら、そうなのかもな。」

「判断するのは私ですか?」

「お前の方が、よく見えるだろ。」

「‥‥、」


 その言葉は、さりげなくて。

 あまりにも、さりげなくて。

 どちらともなく、まわした腕に力をこめる。



   抱いているのか、抱かれているのか。

   すがりつくのか、すがりつかれているのか。



 そんなこと、知らない。‥‥ただ。

 耳に届く、細い声は。



「俺が、泣いていると。
 ‥‥お前に、そう見えるなら。」

「シオン、」

「今だけ、こうしててくれ。
 ‥‥せめて。」



 せめて、今だけは。

 現実から目をそらして。

 哀しみだけを、抱いていたい。



「シルフィス‥‥今、だけだ。」

「分かっています、シオン。」



 分かって、いるから。

 ただ黙って抱きしめる。



 夜が明ける、そのときまで。

 覚めない夢が、覚めるまで。

 ‥‥それまでは、せめて。











 大切なものを亡くした日。

 凍える夜に、互いのぬくもりだけが真実だった。










 ‥‥暗いです(汗)

 ‥‥短いです(汗汗)






 これは、ネットサーフィンの途中で見つけたシオンシルイラストに触発されて書いてしまったものです(^^;
 とても雰囲気があって、二人の表情が切なくて、我慢しきれずにキーボードをたたいてしまいましたが……何故形にするとこうも違うものになってしまうのでしょうか(泣)

saipokoさんから頂きました!
颯城のシオンシル絵を見て書いて下さったそうで、絵描き冥利に尽きます(*'-') しかも素敵です切ないです大好物ですワーイ。
saipokoさんの素敵サイトはこちら

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