「なぁ、シルフィス、しってる? ひとってね、哀しみで死んでしまえるんだって」 「シオン?」 「強い強い哀しみが、ひとの心臓を止めてしまうんだってさ」 飴色の眼ざしが、静かに遠いなにかを見つめている。こんなときだけ、儚い、なんて日頃のシオンには決して似合わないような単語が脳裏に浮かぶ。きっと、シルフィスから遠い見えない何かに、心とらわれている、そんなとき。 こんなにも暖かいベッドの中で、鋭く切り裂くような言葉を、時に吐くから。ほんの短い言葉の羅列だけで、シルフィスにはもうシオンの云いたいことがわかってしまった。だから、少しだけ眉を寄せながら、それでもシオンの言葉を待つ。 ふわりと、シルフィスの心臓の上に掌を当てられる。規則正しい鼓動をシオンに伝える心臓の上に、やわらかな口づけが降りる。 「それは、どうしようもなく悲しいし切ないけど、ちょっといいなって思っちまった」 「なにがです?」 ああ、ほら、やっぱりそうだ。いろんな言葉で、形を変えながらシルフィスに愛を告げる唇が、小さく笑っている。 「だって、お前がいなけりゃ生きていけない、って証明みたいだろう?」
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